「3時間待って診療3分」と批判される診療時間。今回の診療報酬の改定で、再診の診療時間が5分未満だと医療費が3割負担で約150円安くなる「5分ルール」が盛り込まれた。
これまで200床以下の病院や診療所では、2回目以降の再診で検査や処置などを行わない場合(たとえば薬だけもらう)、診療時間に関係なく再診料に「外来管理加算(52点=520円)」が上乗せされていた。ところがこの算定だと、たとえばのどに薬を塗ってもらったケース(口腔咽頭処置12点=120円)など、処置を受けた方が安くなるといった逆転現象が起きていた。
「そもそもこの加算は昭和40年代に内科など、口頭による診察にも評価を与え診療報酬のバランスをとるためにつくられた。確かに今回の改定には、『今日は何もしてもらっていないのに何で高いのか』という問い合わせの電話が相当多かったことがベースにある」と厚労省保険局。
ただし「5分」と言っても実際、ストップウオッチで計るような厳密な規定はなく、医師がカルテにかかった時間を記載する。
しかし、厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)が今月13日にまとめた平成20年度の診療報酬改定で、再診料の上乗せ料金として患者に詳しい説明を行った場合にのみ請求できる「外来管理加算」の適用要件に制度上の不備があることが判明した。
厚労省側は要件の診察時間を「5分以上」と説明してきたが、実際には目安にすぎず、5分未満でも請求できるというものだ。産科や小児科など勤務医の負担軽減策に回す財源が捻出(ねんしゅつ)できない恐れも出ており、4月の実施前に導入意義そのものが問われそうだ。
外来管理加算とは、再診時に検査や処置がなくても医師から病状についての詳しい説明を受けると、再診料とは別に請求される上乗せ料金(520円、うち患者負担は原則3割)だ。現在は「詳しい説明」の基準があいまいなため、医師の裁量に委ねられており、今回の診療報酬改定で適用基準の厳格化を決めた。
厚労省は今回の改定にあたり
(1)問診し患者の訴えをまとめる
(2)病状と医師の判断を伝達
(3)治療経過を踏まえた今後の治療方針を説明
(4)患者の疑問や不安の聞き取り
(5)患者からの聞き取り内容や医師の判断をカルテに記載
−の5条件をすべて満たし、5分以上診察した場合にのみ適用できるよう見直すと説明していた。
5分ルールには別のねらいもあった。導入されれば、医師1人が1時間あたりに請求できる外来管理加算は最大12人分に限定され、医療費抑制につながる。
このため、中医協は開業医の再診料引き下げを見送った代替案として、外来管理加算で浮く財源を勤務医対策に回すことも決めた。
今回、「5分ルール」に不備が残ったのは、厚労省が診療報酬削減に危機感を抱く日本医師会(日医)に配慮して、5分をあくまで目安としたためだ。これだと、5分未満の診察でも5条件さえ満たせば外来管理加算の請求は可能で、5分ルールがなし崩しに骨抜きになる恐れがある。
5分を厳格に守る医療機関とそうでないところの不公平や、支払窓口で患者が混乱することも予想されるほか、5分ルールが厳格運用されなければ、勤務医対策に回す財源が計画通りに捻出できなくなる懸念もある。
さらに、1時間のうち1人だけ15分診療、3分診療の患者を15人として計16人分の外来管理加算を請求することも可能だ。時間の目安が導入される診療報酬にはこのほか、人工透析、心の病気治療がある。今回いくつもの“抜け道”が発覚したことで、制度自体に批判が集まりそうだ。
抜粋 IZA
・コメント
政府は医療費削減のため、あらゆるところで診療報酬の見直しを行っています。現行は、診療報酬によって現場が適応して、運営方法が決まっていくので、この診療報酬が変わることは、医療機関全体が運営方法の変更を強いられることになります。
現場に大きなコストと混乱が生じることになります。事前に現場と膝を突き合わせて話し合ってから施行すれば、少しでもコストと混乱を防ぐことが出来たはずです。
政府主導で思い込みの政策に振り回されるのは、不毛以外のなにでもありません。厚生省が現場の意見を聞く耳持たないのは傲慢以外の何者でもないし、本当に医療問題を解決しようという気持ちがあるのが疑問です。
5分ルールなどほとんど意味をなさない報酬改定などいい例です。このようなくだらない政策をよく出せたものです。情けないとおもわないのでしょうか。
理由の説明もなく、いきなり診療費を大幅にカットされて、それでも患者を見捨てない立派な医師は、どれだけいるでしょうか。現在の報酬体系を元に運営を成り立たせていた医療機関が破綻するかもしれないようなことを簡単に行ってしまう厚生省は誰のために存在するのでしょうか。
医療機関に従事する医療関係者の使命感のみに頼る現在のやり方は大きな問題を抱えていると思います。説明責任もなく、権利を持つ現在のトップダウンの政府運営は、もうダメなのかも知れません。
優秀な人が官より民に多いわけですから当然です。民に任せるところは任せ、官は大まかな政策と、監督責任を負うだけでいいのです。
権利権限を地方や専門機関に委譲することが出来ない限り今後もこのような、政府主導の混乱が続くでしょう。困るのは国民だということを認識する必要があると思います。
参考 診療報酬
保険診療の際に医療行為等について計算される報酬の対価。診療報酬点数表に基づいて計算され、点数で表現される。「医師の報酬」と誤解されがちだが、医療行為を行った医療機関・調剤薬局の医業収入の総和を意味する。
医業収入には、医師の医療行為に対する対価である技術料、薬剤師の調剤行為に対する調剤技術料、処方された薬剤の薬剤費、使用された医療材料費、医療行為に伴って行われた検査費用などが含まれる。保険診療では患者はこの一部を窓口で支払い、残りは公的医療保険で支払われる。
保険診療機関は実施した診療内容等にもとづき、診療報酬明細書を作成し公的医療保険を請求するが、明細書の各項目は金額ではなく点数化されている。診療報酬点数は厚生労働省が告示する。
1点=10円。患者は診療報酬によって計算された一部(3割負担など)を医療機関窓口で支払う。医療機関等で保険を使って診断・治療を受ける(保険診療)ときに用いられる医療費計算の体系となっている。診療報酬点数には医科・歯科・調剤の3種類がある。急性期病院で用いる診断群分類点数 (DPC点数表)もある。健康保険法と老人保健法に基づく。
日本では、中央社会保険医療協議会により診療報酬は決定される。その報酬額は国際標準額の10分の1であり、国民に平等に広く、安価に医療を提供してきた。これだけでは理由ではないが、結果として我が国では世界一ともいわれる医療制度を成し遂げてきた(WHO資料)。
しかし、財務省・厚生労働省による医療費抑制策、医師数抑制策、新研修制度などにより、日本においてはその限界を越え、医療崩壊が進みつつある。また日本での医療制度・実状を無視した医療訴訟・判決や医療面での無知・誤認識に起因した市民団体・活動家によるバッシングも医療崩壊を促進しつつある。一部の識者はこれを「医療破壊」と評している。
参考
厚生労働省